この部屋にはプロジェクターもスクリーンも存在しない。では、どのようにして映像を映し出しているのか。
実は、暗闇の中には鉄道模型のレールが敷いてあり、それを取り囲むように「様々なもの」が置かれている。そこに光を灯した列車を走らせることで「影絵」を映し出しているのだ。
スノーシェッドと呼ばれる雪国独特のトンネルをくぐったり、雪山やブナ林を駆け抜けたり。まるで電車の車窓から越後妻有を見ているようではないだろうか。
では、その影を生み出している「様々なもの」とはなんなのか。実はそのすべてが越後妻有の名産品である織物にまつわる道具で構成されている。
そして、アートはあなたに問いかける。
この作品を見ていると「懐かしい」という気持ちがわいてくる。そう話す人がいる。
しかし、故郷をビデオカメラで撮影した映像を見ているわけではない。あなたが見ているのは、限りなく心象風景に近いのかもしれない。
もしも、この風景に懐かしさを感じるならば、その記憶をたどってみよう。その先に、あなたが暮らした町と越後妻有との共通点が見えてくるはずだ。