大地に流れる信濃川を見て、作者がテーマにしたのは「水」「波動」「共鳴」だった。
目の前に「水の波紋」が見えるだろうか。その正体は「音」だ。上部にあるステンレスの棒から低周波が流れていて、その振動が波紋に変換されている。もっと言えば、その波紋は、ストロボの光を通して鏡に反射することでスクリーンに映し出されている。
目に見えないはずの音。それは「水」や「光」を媒介とすることで目に見える「かたち」として浮かびあがるのだ。
そして、アートはあなたに問いかける。
この作品をジッと見つめていると、目を凝らしているのか、耳を澄ませているのか、わからなくなる。五感が溶けていき、波紋が全身に転移していくようでもある。アートを「感じる」とは、そのようなことなのかもしれない。
大地の芸術祭はそのアートによって、目には見えない土地の記憶を、目に見えるかたちに変換している。つまり、アートを通して越後妻有の歴史や文化にアクセスできる。それは、必ずしも言葉で理解できるものではないかもしれない。
これから出会う作品に対してもそう。いつもより少しだけ時間をかけて作品をジッと見つめてみてほしい。すると、あなたの五感は解放され、全身で何かを「感じる」はずだ。
その感触をつかんだとき。それが、あなたのアートの見方が変わるときかもしれない。