「辻」とは、交差点のこと。そこで、この場所で交わる道の本数を数えてみてほしい。1、2、3、4、5、階段を含めて、6本。だから「六道の辻」と呼ばれている。それだけではない。それぞれの道は、すべての生き物が輪廻転生する6つの世界に続く道に当てられている。つまり、「生まれ変わったら、どんな世界に行けるか」という来世に続く道だ。

それぞれの道の先にある6つの世界を紹介しよう。まずは「天上界」。天国のような苦しみの少ない世界だ。次に「人間界」。現状維持。苦しみも多いが楽しいこともある世界。残る世界は、修羅、畜生、餓鬼、地獄。どれも辛い世界だが、「修羅界」は永遠に戦い続けなければならない世界。戦争が終わってもすぐに次の戦いがはじまってしまう。「畜生界」は意思をもたない動物の世界で、「餓鬼界」はずうっとお腹が減っているような世界。「地獄界」は言わずもがなで最悪だ。

どの道が、どの世界に続いているのだろう。「天上界」へと続く道は、興福寺へと通じる52段の階段がある道だと言われている。しかし、それ以外の道についてはハッキリしていない。奈良町に住んでいる人たちにとって、「自分たちの家がある道は地獄の方向です」と言うのは嫌なもの。だから、「天上界」以外の道はあえてあやふやになっているのだった。

ちなみに、階段が52段ある理由は、仏教の修行に52のステージがあるから。ほかにもいくつかの説があるのだが、東大寺の二月堂にあがる階段も52段。これは決して偶然ではないのだろう。

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