国内にわずか3社。これは、今でも絹弦を作っている会社の数だ。琴や三味線は、絹弦なくしてはありえない。絹弦とは文字通り絹でつくられた弦のことで、通常の糸よりも弾力があり、よく伸びる。この弾力が、和楽器の音色を生み出している。絹弦の製法は、機械化が困難で伝統的な技術が必要なため、新しく参入してくる企業もいないという。今ある会社がいかに持続していくかで、和楽器の命運が決まる。そんな厳しい環境の中、丸三ハシモト代表の橋本英宗さんは先を見据えてこう語ってくれた。
「最近は今までうちで扱ってこなかった弦の研究をしているんです。弦をつくる会社が減っていくと、演奏家は困ります。なぜなら、そこの弦の音色を好きで使っているから。音が柔らかい弦がいいとか、うなりのある弦がいいとか、弦にも個性があって演奏家の弦の好みって様々なんですよ。でもいきなり『あれと同じのを』と言われても作れないんです。だから演奏者のことを第一に考えて今から研究しているんです。それが結果的に、長く続いていくことに繋がると思っています」と橋本さん。他にも中国や韓国の伝統楽器の弦もつくっており、日本に留まらず、世界の伝統楽器の絹弦を作り続けている。
木之本を含む湖北地域では、古くから養蚕が盛んで、和楽器で使う生糸を作り続けてきた。今でも丸三ハシモトで使っている糸は、賤ヶ岳の麓で作られている。日本の和楽器を含め、アジアの伝統楽器を支え続けているのは、ここ木之本の絹弦なのだ。
丸三ハシモト
滋賀県長浜市木之本町木之本1427
Tel:0749-82-2167