釈迦堂は「前の本堂」である。1856年から100年あまりは現在の大本堂がある場所で「不動明王像」を安置していたことになる。

完成当時、江戸の人たちを驚かせたのは、建物の周囲に張り巡らされた彫刻だった。階段をのぼり、スロープのようになっている場所を「時計まわり」で歩いてみよう。そこには10年かけて彫られたという「二十四孝」と「五百羅漢」の物語がある。

「二十四孝」の孝とは親孝行のこと。たとえば、母親のそばで背中を出している子供。これは、「親が寝るときには、子は身を呈して “蚊よけ” になるべきだ」という教えなのだ。現代の感覚からすれば極端に思えるかもしれないが、ひとつひとつの彫刻に込められた親孝行の物語を想像してみてほしい。

「五百羅漢」とは、500体の仏様を彫ったもの。ひとりひとり彫り分けられた顔の中には、親戚の顔が必ず見つかるという。訪れる人の中には、死んでしまった家族の顔を探しにくる人もいるらしい。500体の仏様の中から家族の顔を見つけることで、無事に天国に行けたことを確かめているのだろう。

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