額堂とは、奉納された額や絵馬を掲げる場所。江戸時代には、有名な画家による絵馬が展示されたり、和歌や俳句も掲げられ、一種の美術館のような役割を果たしていた。「禁酒」や「女断ち」を宣言するような絵馬もあったという。額堂に掲げて周りの目を意識しながら誓いを守ろうとする気持ちは、現代でも共感できるのではないだろうか。
実は、新勝寺にはもうひとつの額堂があった。それは数十年前の火事で焼けてしまったが、三重塔が立っているあたりに存在していた。とある歌舞伎役者が寄付したもので、はじめは「せったい所」と掲げた看板があり、お参りに訪れた人にお茶を出したりしていたという。
さらに、その歌舞伎役者が巨大な絵馬を奉納して掲げると、その絵を珍しがって見物に来る人があらわれた。そこに、たくさんの絵師たちが「我も我も」と続いていったという。画家にとっても、額堂に掲げればたくさんの人に見てもらうことができ、それが後世にまで残ることになる。作品の発表の場としてこれ以上ない舞台であったのだ。
やがて、掲げきれなくなるほどの絵馬が集まり、第二の額堂が建てられることになった。その第二の額堂こそが、この建物なのであった。