この堅牢そうな建物は、日本の伝統建築である「蔵」である。保管庫として使われることが多いが、この建物は店舗として使われている。ここでは何が売られているのか。「一粒丸(いちりゅうがん)」と呼ばれる「はらぐすり」である。

その昔、お寺にお参りに行った際のお土産といえば「薬」であった。新勝寺の表参道でも「一粒丸の売上か、お寺のお賽銭か」といわれるほどよく売れたという。たとえば、こんな話がある。

ある日、「腹が痛い」と店に飛び込んできた客がいた。おおかた旅の途中で変なものでも食べたのだろう。「一粒丸」をすすめると、さっそくそれを飲んで新勝寺に出かけていった。しばらくたって、その客は再び店に飛び込んできた。「参拝しているあいだに治った」と、帰りにもう一袋、買って帰ったというのだ。

この三橋薬局は、300年以上前から「一粒丸」を作り続けてきた元祖であり、その製法は三橋家だけに伝わる秘伝である。「マツモトキヨシ」で薬を買うだけではなく、成田でしか手に入らない「一粒丸」をお土産に加えてみてはどうだろう。

ちなみに、この建物が「蔵」である理由は、気温や乾燥状態を適度に保てるから。デリケートな一粒丸を取り扱うのにぴったりの建物なのだった。

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