「幽霊子育飴」とは不思議な名前である。その由来には、こんな伝説が残されている。

──その昔、夜更けになると決まって飴を買いに来る女がいた。不審に思った店主が女の後をつけていくと、墓地に着いたところでスーッと消えてしまった。と、そのとき。墓の下から赤ちゃんの泣き声がするではないか。墓を掘り返してみると、なんと、飴をしゃぶっている生きた赤ちゃんが出てきた。聞けば、その墓は子を身ごもったまま亡くなった女の墓だという。きっと、この女の幽霊が子育てのために飴を買いに来ていたのだろう。こうして、その飴は「幽霊子育飴」と呼ばれるようになったという──

昔は、出産と同時に命を落とす女性も多かった。この店の住所は「轆轤町」だが、かつては「髑髏町」と呼ばれていたところを後になって改められたという。このあたりには髑髏がたくさん転がっていた時代もあったのかもしれない。

後日談。こうして墓場で見つかった赤ちゃんは、大人になって「高台寺」のお坊さんになったという。“高台寺”、“子を大事”。これは伝説ではなく、落語の話である。

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