“トンネルを抜けると別世界” そんな体験をしたのではないだろうか。この場所こそが「花街」であり、舞妓さんや芸妓さんが行き交う通りである。石畳、お茶屋、犬矢来(いぬやらい)など、景観を楽しみながら歩いてみてほしい。
ちなみに犬矢来とは「犬を追い払う」という意味で、表向きは犬がおしっこをひっかけたりしないようガードするものといわれている。が、その裏では「軒下に入るな」というサインでもある。つまり、本当は「犬やらい」ではなく「人やらい」なのだ。「軒下に入るな」という理由には、プライバシー保護の意味もあるが、一方では「権威づけ」の側面もある。隔たりがあることで格が上がる。そんな花街ならではの演出でもあるのだ。
花街もまた洛中には置けなかった夜の街。だからこそ、この場所に集まってセーフティネットとしての共同体を築いた。「一見さんお断り」のほかに「一軒のお茶屋に入ったら、他のお茶屋に浮気してはいけない」というような暗黙のルールがあるが、それは、花街の中で客の取りあいをしないための文化でもあるのだ。
ちなみに、昼過ぎぐらいにこの道を歩いていると、舞妓さんや芸妓さんが普段着の着物で挨拶回りをしている姿が見られるかもしれない。これは、その日の夜に行くお茶屋にあらかじめ挨拶をしにいく文化があるからで、他の花街ではあまり見られなくなった光景である。また、彼女たちは18時ごろに出勤するため、その時間になると本番の着物でお茶屋に向かう姿が見られるだろう。