清水坂から何本かの路地に迷い込み、出てきた先は大通り。この「五条通」は京都市最大の幹線道路で、道幅は50mもある。それにしても不思議だと思わないだろうか。こちら側には小さい商店が並んでいるのに、五条通を挟んだ向こう側には店がない。その代わりに大きなマンションや駐車場が建ち並んでいる。

実は、この道もこれまでの道のように細かった。しかし、戦争がはじまると空襲対策として、この地域にあった家々が強制疎開することになった。そして、戦後はこの場所を「国道一号線」として舗装。現在のような大通りとなった。

これまで歩いてきた路地を思い出してほしい。あれほど建物が密集していると、空襲でなくても火災が起きるとすぐに火が燃え広がってしまう。近代都市としては防ごうとするのが当然だ。しかし、道幅を広げてばかりいると、日本中が同じ景観になってしまう。「景観を守りたい」とするならば防災にも向きあわなければならないのだ。

路地の中に「消火栓」と書かれた赤い箱がたくさんあったことを覚えているだろうか。そうした取り組みもそのひとつ。災害時を見越して路地に新しく名前をつける人がいたり、あじき路地を守る人がいたり、景観を守ろうとしている人たちがたくさんいる。だからこそ、守られている風景でもあるのだ。

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