昔から鴨川は「三途の川」に例えられてきた。晒し首の現場であり、疫病が流行ったときには死者であふれかえったこともある鴨川は、まさに、あの世とこの世の分かれ道。そんな鴨川を渡って、いよいよ洛外から洛中へと足を踏み入れる。すると、これまでとは景観が大きく変わり、市街地としての京都の姿が見えてくることだろう。はじめに比べるとゆるやかになっていた坂道もここで終わり。平坦な道となり歩きやすくなるはずだ。
この先も路地を見かけることがあるだろう。幅4m以内の細い道は、京都市内だけで1万本以上あるといわれている。ふと、路地を見つけたときには、また歩いてみてほしい。路地は細くて視界が狭いぶん、視点が定まりやすい。大通りだと見逃してしまいそうな細かい部分にまで目が行き届く。路地歩きがどこまでも歩いていけそうなほど楽しいのは、そういった発見が続くからに違いない。
今回のガイドを教えてくれた光川さんは言う。「毎日、同じ道を歩いていて楽しいかい?」と。ときには、いつもの道をやめて、自分の知らない世界を冒険してみること。路地裏を歩く勇気が必要なのだ。