首里を王都とする琉球王国を立ち上げたのは、第一尚氏・尚巴志。しかし、王国はまだ不安定で反乱分子も各地でくすぶったまま。国王も約5年ごとに代替わりするほど短命だった。

そんな中、尚巴志の時代から代々の王家に仕えてきた「護佐丸」は50歳をこえ、老熟の域に達していた。そして、六代目の王・尚泰久から「ある使命」を言い渡された。

「勝連グスクの阿麻和利が不穏な動きを見せている。首里と勝連の間にある中城で阿麻和利を見張ってくれまいか」

王家の命とあれば、断る道理もない。護佐丸は中城グスクに移り住み、城の整備に取り掛かった。そして、10年かけて堅牢な城を築き上げた。

一方、阿麻和利は。先代の長を倒して勝連グスクを奪った勢いのまま、虎視眈々と国盗りを狙っていた。

「首里を攻めたいが途中にある中城が邪魔だ。聞けば、あの護佐丸がグスクを強化しているらしい。まずは護佐丸をなんとかせねば」

そこで、阿麻和利は大胆にも自ら首里へと向かう。そして、尚泰久に密告する。

「あなたが中城に置いた護佐丸ですが、グスクを強化しているのは首里を狙ってのこと。王命を逆手にとって謀反をたくらんでいますぞ」

尚泰久にとって護佐丸は生まれる前から王家に仕えていた忠臣である。「なにをバカな」と相手にしなかった尚泰久だが、 阿麻和利はしつこく言葉を重ねる。

「あなたは安心しきっているようですが、万が一のことがあっては取り返しのつかないことですぞ」

根負けした尚泰久は使者を偵察にいかせる。そのころ護佐丸は勝連での有事に備えて兵たちの訓練を続けていた。その様子を見た使者は思わず早とちり。「たしかに護佐丸は戦の準備をしていました」と報告する。驚き慌てた尚泰久は、阿麻和利を護佐丸討伐のリーダーに任命した。

阿麻和利は、宴会がおこなわれる「中秋の名月」の日に狙いを定めた。そして、中城グスクの兵たちが酔っ払う時刻を見計らって夜襲をかけた。不意を突かれた護佐丸。「おのれ阿麻和利め、ついに謀反を起こしたか」と、一の郭の城壁の上に立つ。そこで護佐丸は唖然とすることになる。阿麻和利は首里王家の旗を掲げていたからだ。中城グスクの正門から堂々と阿麻和利は言う。

「首里王府の命により、謀反をたくらむ護佐丸を討伐しにきた」と。

護佐丸はその瞬間に阿麻和利の策略を悟った。護佐丸の兵たちは声を荒げる。「我らに攻められる道理はありません。返り討ちにしてやりましょう!」しかし、護佐丸は「ならぬ!」と一喝。この状況で阿麻和利と戦うことは首里王府に逆らうことになる。王家に忠義を尽くしてきた護佐丸は悔しさをかみしめながら妻と子供を介錯する。そして、自らも自害した。

すべては阿麻和利の策略通りに事が進んだ。「これで邪魔者はいなくなった」と、満を持して首里に攻め込んだ阿麻和利だが、結果は大敗。勝連グスクに逃げ帰ったものの討伐隊に追い詰められて処分された。

事のあらましを知った尚泰久は護佐丸を殺してしまったことを深く後悔した。その懺悔の声は届かなかったかもしれないが、最後まで忠義を貫き通した護佐丸。その物語は現代まで語り継がれている。

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