正門の脇に穴があいている。これは沖縄戦の際、日本軍が中城グスクに「壕」を掘ろうとした跡だ。

しかし、掘ってみると、中城グスクの城壁は石組みが強固に組まれていて、日本軍の装備を持ってしても穴をあけることは難しかった。あるいは時間があれば可能だったかもしれないが、アメリカ軍の上陸は間近に迫っていた。結局、中城グスクを基地として使うことをあきらめたのだ。

中城グスクはそれほど頑丈に作られているのだ、という話ではない。それゆえに戦場にならずに済んだのだ。

首里グスクをはじめ、ほとんどのグスクが戦場となり、跡形も残らないほど破壊されたが、中城グスクは往時の姿をとどめることができた。この穴は、そんな幸運を伝える穴なのだ。

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