沖縄でいう「グスク」は、日本の「城」と何が違うのか。
簡単にいえば、グスクとは御嶽と呼ばれる拝所が集まる信仰の場である。いわば寺社仏閣のような場所なのだ。グスクの中はそれぞれの郭に分かれているが、ひとつひとつの郭に御嶽があり「イべ」がある。イべとは神様が天から降りてくる場所。神様が宿る「御宿(ぐしゅく)」が「グスク」になったのだ。
世界遺産である理由もここにある。城壁や建物ではなく、「グスクの中で何が行われてきたか」が文化遺産。見た目では分からない「物語」こそが世界遺産に認定されているのだ。
6つの郭をもつ中城グスクには、8つの拝所があるが、南の郭にはそのうちの3つが集中している。
まずは「小城ノ御イベ」。「小さい」という漢字が当てられているが、「古い」という言葉も沖縄では「くー」と発音する。もしかすると、正しくは「古いイベ」という意味なのかもしれない。いずれにせよ中城グスクの中では最も古い御嶽であり、城壁が築かれるより昔から存在していたとされている。
つぎに、「御當蔵火神」。実は、首里の地名に「當蔵」という場所がある。首里に行きたくても行けない人が、首里に向かって祈るための場所なのだ。
「雨乞ノ御イベ」は文字通り、雨乞いをする場所。昔から日照りが続きやすい島である。どのグスクにも雨乞いをする御嶽は必ずあるという。
このように御嶽が集中している「南の郭」。正門を突破してきた兵隊の戦意をそぐ効果もあったといわれている。