かつては「大黒天」という神さまが祀られていた祠があり、休憩小屋も併設されていた。
ようやく四合目まで来たわけだが、そもそも「合目」とは何なのか。富士山は米を積み上げたような美しい円錐形をしている。そのことから、穀物を数える単位である「合」を用いて、1里をもって1合、2里をもって2合、と呼んだのがはじまりとされる。ほかにもユニークな説があり、人間が背負っている「業(カルマ)」を由来とする説もある。一合目、二合目、三合目と段階を踏みながら神仏に近づいていく中で、穢れを徐々に落としていく。そんな意味合いもあったのかもしれない。
少なくとも、標高で区切られているわけではなさそうだ。ひとつ言えることは、合目は地形的に安定した場所にあるということ。これまでに見かけた倒木や、雪解け水によってえぐれた道を思い出してほしい。そのような被害を受けにくい場所には、古くからの祠がそのままの形で残されていた。すると、そこを通りかかった人たちは「ちょっと拝んで行きましょう」となる。そうして足を止めたら「ついでに休んで行きましょう」となる。すると「お茶を出しましょう」という人があらわれる。こうして、それぞれの合目に茶屋ができていったのである。