円融蔵の来迎図:これが極楽浄土のガイドブックです

拝観順路を通り、最後に向かうのは資料館・円融蔵。ここには三千院に伝わる仏像や襖絵などの寺宝が展示されているが、やはり見逃せないのは往生極楽院の天井画(来迎図・複製)だろう。

これは、最新の赤外線調査で明らかになった情報をもとに7年の歳月をかけて復元されたもの。真っ青な背景の合間に天女や観音様がずらりと並び、死者を極楽へ招く様子が描かれている。

ここで、来迎図の見どころを紹介しよう。
まずは正面に描かれた楽隊から。笛や太鼓を演奏するのは仏様を補佐する「天部」で、天部の演奏する音楽は、耳に心地よい阿弥陀様の説法を表しているそうだ。

正面反対側の壁には、宝珠や極楽の食べ物などが描かれ、極楽浄土に向かう人やその人が思う人々に供養ができる喜びを表現している。

最後に左側の壁を見てみよう、奥から2番目の仏様は他の仏とは異なり、正面を向いているのが分かるだろうか? これは、阿弥陀如来の前世仏とされる「賽蔵菩薩(ほうぞうぼさつ)」で、時空を超え、死者を迎えに来た来世の自分(=阿弥陀菩薩)を見ているそうだ。

このほかに、左側の壁には後ろを向いている「大自在菩薩」の姿も見える。この仏様は後ろを振り返り、仏の教えを理解しきれない人を見守る役割を与えられているという。

この壁画が描かれた当初、阿弥陀三尊の像とともに天井画を見た人々は、極楽浄土の素晴らしさをひしひしと感じたに違いない。

自らの意思を超えて様々なことが起こり、ままならないことも多い現世の中で、確かなものがあると知るだけで心は救われる。浄土を描いた来迎図は不安を抱えた数多くの人々の心を救ったのだろう。

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