書院は国王の仕事部屋。たとえば、役人があげてくる書類に目を通してハンコを押す。最終的な決定権はすべて国王にあり、神様として崇められていたとはいえ、かなり多忙であったと考えられる。

書院は応接間としても使われた。たとえば、薩摩や中国のお客さまが来たらお相手をしなければならない。幅広い教養が求められるため、書を書いたり、漢文を勉強したり、日々の研鑽も欠かせなかったそう。

書院の目の前に広がる庭園は、日本の枯山水をベースに、中国の回遊式=庭を歩ける様式を取り入れている。仕事の合間にはこの庭を散歩していたようだ。

ちなみに、この先にある「奥書院」は、国王の休憩室。書院と同じように「金の釘隠し」が使用されているのだが、これが王様の部屋である証。部下が控える部屋などは黒の釘隠しになっていたりする。

仕事が早く終わった日。国王は部下を呼び出して遊びに興じることもあった。

たとえば、囲碁が得意な「渡嘉敷ペークー」。国王は毎日のようにペークーを呼び出して囲碁を打っていた時期があった。

しばらくしたある日、国王のそばに仕えていた別の役人がふたりの会話を聞いて驚いた。

「王様、ほら早く」
「うーむ、ちょっと待ってくれんか、ペークー」
「だめだめ、早く次の石を置いて」
「これでどうだ!」
「ざんねん、これで王様の負け」
「ああー!」

なんと、国王に向かってペークーは友達のように話していたのだ。部屋から出てきたペークーを捕まえて役人はこう言った。「ペークーさん、国王に向かってその口の聞き方はなんですか!」あわれペークーは叱られてしまった。

翌日も国王に呼び出されたペークー。碁石をひとつ置くたびに後ずさり、頭を畳にすりつけんばかりにひれ伏してこう言った。

「国王様、どうか御一手を」
「うーむ、ちょっと待ってくれんか、ペークー」
「はい、承知いたしました」
「これでどうだ!」
「参りました、王様の勝ちでございます」
「……おいおい、ペークーよ、どうしたんだ」

態度が豹変したペークーに国王は問いかける。「実は叱られてしまって……」と舌を出すペークーに、国王は笑いながら言った。「たしかに目上の者に対する礼節は大事だが、囲碁をするのにそれでは楽しくない」

こうしてペークーは国王と2人でいるときは友達のような言葉遣いが許されたのであった。

これは実在の人物をもとにした民話であるが、案外、これに近い日常も見られたのかもしれない。

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