和倉温泉の中央に位置する公衆浴場、総湯──

現在の総湯は、実は「七代目」の建物。では、初代はいつかといえば、1899年。約100年のあいだに7回も建て直されたことになる。その理由はひとえに和倉温泉の性質によるものといえよう。

和倉温泉の特徴は大きく2つ。まずひとつは、温泉たまごが作れるほど高温であること。その温度は90℃にも達する。ふたつ目は、その温泉たまごに「ほんのり塩味」がつくほど塩分濃度が高いこと。その濃度は日本で4番目に高いともいわれている。温泉に浸かったあと、石鹸を使ってみてほしい。きっと泡立たないはずだ。これは塩分をはじめとする温泉成分の濃度が高いからで、その成分が石鹸に反応して石鹸を無力化してしまうからである。

逆にいえば、それこそが和倉温泉の効能である。皮膚や切り傷を殺菌したり、毛穴を引き締めて保温、美肌効果をうながしたり。飲めば内臓や便秘によいともいわれている。

とにかく、和倉温泉は高温で塩分濃度も高い。現在の総湯が七代目というのは、それだけ設備が痛みやすいのだろう。現代でさえそうなのだから、昔はもっと大変だったはずだ。なにせ、和倉温泉の歴史は1200年前までさかのぼることができるのだから。

初代・総湯が最初の浴場なのではない。その遥か昔から和倉には浴場があった。そのはじまりは「湯元」がまだ海に浮かぶ湯島であったころであり「湯挟屋」と呼ばれた粗末な小屋だった。そして、湯島に橋が架けられたころに女湯もあるような「湯座屋」となり、さらに埋め立てが進んで現在のような陸続きとなったころに初代「総湯」が建てられたのだ。

この旅では、和倉温泉の温泉街としての軌跡を辿ってみよう。

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