ここは「湯の元」。温泉が海中に湧き出した場所である。そう、ここは昔、海だったのだ──

温泉が最初に発見されたのは9世紀。この場所ではなく、山側にある「湯の谷」で湧き出したという。人々は貴重な湯をもたらしてくれた神様に感謝して「祠」を建てた。しかし、200年後。温泉は突如として枯れてしまう。

伝説によれば、「湯の谷で不浄なものを洗ってはいけない」という言い伝えがあったにもかかわらず、ある漁師の妻が腰巻きを洗濯してしまった。そのことで神様は怒ってしまい、湯を止められてしまったそうな。反省した漁師の妻は夫とともに祠に通って「再び湯をお恵みください」と願いを懸けた。すると、あるとき海がぶくぶくと泡立っていることに気づく。あらたな不吉の予兆だろうか……そう思ったとき。白鷺がその泡立っている場所に降り立ち、しばらくしてまた元気に飛び立っていった。その様子を目の当たりにした漁師夫婦は舟に乗り、おそるおそる海の泡立ちに近づいていく。すると、なんと熱かった。温泉が海に湧き出していたのであった。

それがこの「湯元」と呼ばれる場所である。

この伝説のほかに、11世紀に大きな地震が起きたことで湯脈が移動したという説もあり、いずれも定かではない。ただひとつ言えるとすれば、和倉はかつて「涌浦」と呼ばれていたこと。和倉温泉の「和倉」とは「温泉が湧く浦」だったのだ。

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