戦前までの面影はどこに──

皇太子が和倉を訪れたことに宣伝効果もあったのか。和倉温泉の賑わいは日増しに増すばかり。そのころ、この通りが和倉のメインストリートであった。よく見れば、昔ながらの建物に面影が感じられるのではないだろうか。

見えないところでいえば、当時は旧街道に向かって「さよなら橋」と呼ばれる橋が架けられていた。現在では川とは呼べないほど細い川筋がアスファルトの隅で流れているのが見えるだけ。しかし、当時の旅館の仲居さんたちは、お客さんを送り出すとき、名残を惜しみながらメインストリートに通じるこの橋まで見送りにきたそうな。

そして、時代は昭和に。戦時中、和倉が攻撃を受けることはなかった。しかし、和倉温泉の旅館は軍隊の指揮下にはいり、旅館は兵隊たちの病院となり、客室は負傷兵で埋めつくされたという。

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