表参道といえば「ケヤキ並木」。この通りに面した建物はどれもその影響下にあるが、この建築ほどケヤキ並木を活かしたデザインはないかもしれない。網目のように張り巡らされたコンクリートをよく見てほしい。下のほうは幹のように太く、上のほうは枝のように細くなっている。枝と枝が重なりあうその姿はまさにケヤキの木。
枝の隙間にピッタリとはめ込まれた窓ガラスにも注目してほしい。いわゆる窓枠のようなものが存在せず、ガラスの継ぎ目すら見あたらない。完全に建物と一体化していることがわかるはずだ。
建物の中に入ってみると、枝と枝の隙間から外を眺めることができる。窓から差し込む光は木漏れ日のようであり、森の中から世界をのぞき見ている気持ちになる。夜は表参道を挟んだ向かい側から建物を見てみてほしい。ケヤキの木と重なりあい、ともに並び立つその姿は、場所と建築との美しい関係性を教えてくれるはずだ。