ヒルサイドテラスはひとりの建築家が歩んできた歴史だ。それは、代官山という街を形づくってきた歴史でもある。1960年頃、このエリアは「朝倉家」を中心とする住宅が数棟あるだけにすぎなかった。そこに建築家が入りこみ、住宅、商店、オフィス、ギャラリーが混在する複合施設を建てはじめた。それも、1998年までおよそ30年の月日を重ねて。A・B棟、C棟、D・E棟、アネックスA・B棟、ヒルサイドプラザ、F・G・H棟、そして、ヒルサイドウエスト。ここはぜひ、建てられた順番にめぐってみてほしい。

歩きはじめるとすぐに気付くだろう。建築家は住宅街をつくったのではなく、人が集まって交われる「街そのもの」をつくったのだと。たとえば、シンボルとなる木のまわりを人が囲めるようになっていたり、隣あう建物がゆるやかに連続していたり、そういう工夫もあちこちで見られるはずだ。

ヒルサイドテラスと隣あうデンマーク大使館も、この建築家「槇文彦」の手によって建てられた。どういう経緯があったのか。ひとりの建築家の歴史とともに街が成長していく物語を想像してほしい。


写真:ASPI

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