「2021」は、2016年から始まり、今も続くアートプロジェクトである。2020年の東京オリンピック・パラリンピック、「2020」という象徴が巻き起す社会現象に、我々は巻き込まれる。「2021」は、「2020」が差すある一点に力を集中させる行為に対するカウンターであり、「その先を考える」ことを象徴化した作品だ。これまで東京を中心とした公共空間に、巨大な木製「2・●・2・1」のオブジェクトを設置するパフォーマンス、識者への「2021」に関するインタビューなど様々な形で展開を続けている。

エイベックス本社に設置された『2021#TokyoScope』では、この時間軸上にある『2021』を、東京という都市空間の中に拡張する。avex本社ビルのアトリウムは、新国立競技場などのヘリテッジゾーンと、六本木ヒルズや豊洲ベイエリアの2方向を串刺すように開いている。会場の持つ都市軸に、オリンピック後の2021年に焦点を合わせた時間軸を重ねる。無意識的に生まれている2つの軸線の焦点を可視化し、東京のこれからを問う。

青山通りからavex正面を見ると「2021」の文字が大きくガラス面に見えてくる。「2021」の「0」が大きな鏡面の球体になっており、鏡面には青山通りを行き交う人々と軸線を表す赤いラインが映り込んでいる。ビル内に入ると、目の前の大階段に直径7mの球体が据えられている。脇のエスカレータを上っていくとその球体が後ろに雫型に伸びているのが見え、その表面に様々な情景が写り込んで行く