洗練されたホテルの室内空間にある、電気のスイッチや空調コントロールパネル。
ファブリックやインテリアのデザインには気が配られているのに、なぜ、これらは淡白な外観のままなのだろう。この不統一感が、インテリアの質を阻害しているのではないか——。
そんな仮定のもとに立ち上がったのは、テクノロジーと人の豊かな未来をデザインする会社「mui Lab」のデザインチームだ。
彼らはまず、ニューヨークのとあるホテルに照準を合わせ、そのホテルのコンテキストに合うデザインを作り上げていった。そっけないパネル部分に親しみやすさと暖かさを加えるために「木」を使用することにしたのは、大きな決断だった。木には透明性がないので、薄く作り込まないといけないし、自然のものなので透け具合にバラツキがある。その上、湿度や温度に応じて伸びたり縮んだりして動くため、本来は工業製品には向かない素材なのだ。完成に至るまでには、ひとつひとつの木材につき、厚みも、塗料の量も、何十パターンも試す必要があった。
こうして完成したプロダクトは、なんの変哲もない木の板のような姿形。
「空間に馴染む」ことを目指してたどり着いたデザインは、そのままでは機械であることにすら気づかない。手で触れ、木の内側から光が浮かびあがるとき、初めてその本当の姿を現すのだ。
ぜひ実際に手で触って、この「家具とエレクトロニクスの融合」を楽しんでほしい。