それは今から400年も昔の話だ。
1616年、朝鮮から渡ってきた陶工が、日本で初めての陶磁器を作った。佐賀県有田町周辺を発祥とした「有田焼」の誕生である。
この透き通るような白地に美しい絵付けがされた磁器は、明治以降、またたく間に全国に広まり、そしてヨーロッパを一世風靡した。しかし、バブルの時代は、昔の作品のコピーのようなもので溢れていたという。伝統を守って作れば、それだけで売れたからだ。
『1616 / Arita Japan』は、有田焼の伝統を踏襲しながらも、これまでの有田焼とは異なるデザインアプローチを試みる、新しい器のブランドだ。
これまでのシリーズはシンプルなデザインだったが、新シリーズでは、現代的なラインとグラフィックを融合させ、懐かしさと新しさを併せ持つデザインを生み出した。担当したのは、ドローイングに定評のあるピエール・シャルパンだ。
日本の伝統工芸である「有田焼」を、全く別のコンテクストを持つ海外のアーティストがデザインする。こうしてまた新たな文化が生まれ、次の世代へと繋がれていくのだ。まるで昔話が、人から人へ伝わるとき、どんどんその形を変えていくように。