モノやコトが溢れかえる時代、「新たなモノを生み出す」ことに、どれだけの価値を与えることができるだろう。クリエイティブな仕事に関わる者なら、一度はこの疑問が頭をよぎったことがあるのではないだろうか。
この作品の作者であり、プロダクトデザイナーの小関隆一は、その疑問に向き合い続ける一人である。
『Oculus』の着想は、仕事中、ふと目に入ったウォールウォッシャーから得たものだ。こうした「周囲の壁と一体になることで明かりとして完成する」照明は、建築やインテリアの世界ではよく見る手法だが、小関はそれをひとつのプロダクトとして自立させるアイデアを形にしようと試みた。
試行錯誤して生まれたのが、この、ウォールウォッシャーのようでありながら、美しく繊細な光のグラデーションを内包して自立する照明だ。伝えたいメッセージの純度を高く保つため、極限までシンプルに作り上げたという。
「何かを生み出す以上は、多かれ少なかれ『価値観の更新』のようなものを生み出したい」
それが、冒頭の問いに対する彼の答えだ。この作品は私たちに「明かりのあり方」を今一度考えるきっかけを与えてくれる。その小さな価値観の更新の積み重ねが、今後のデザインにおいての大きな転換を支える礎となっているのかもしれない。