——内と外、自己と他者、人工と自然。
作品の作者・鈴木紗也香は、作品を通して相反するふたつのものの境目
を探ってきた。そして、描き続けるうち、そのものの関係性が段々と変化していった。
「内と外は壁によって完全に遮断されているのではなく、外のものが中に浸食してきたり、反発したりしながら混じり合っているのではないか」
今回の作品も、作者が長年探求してきた「内と外」を、絵画に置き換えて表現したものだ。モチーフとして、窓や鏡、画中画などといった様々なフレームが使われている。窓には「中と外」を分ける機能が、鏡や画中画には、あらゆる世界を入れ子状にし得る機能が備わっており、世界観を表現するのに重要な役割を果たしている。
作者はこう語る。
「絵画がそれのみで切り取られて鑑賞されるのではなく、実際に鑑賞者の立っている場所をも巻き込むような鑑賞体験をしてほしい」
作品を見ているうち、絵画の世界に没入するような感覚があるかもしれない。だとしたら、それは、作者の“魔法”によって、絵画と現実の境目が溶かされた証拠である。