40日以上も続いた洪水の末、暗い舟の外に広がっていたのは一面の海だった——。
『ノアの方舟』のワンシーンである。
この作品は、そのあとに続く展開を描いたものだ。
作者・高橋洋平は、普段、自身の体験から得た感情や思いをきっかけに作品を作り上げるスタイルの作家だ。今年30周年を迎えるJ-WAVEを記念して「創世記をテーマに作品を作ってほしい」という依頼がきたとき、彼はまず、方舟に乗っていた動物たちの気持ちに想いを馳せたという。
大洪水に揺られ、光の差さない方舟の中、動物たちはきっと不安な気持ちだったはずだ。ようやく舟が止まり、期待と不安のなかで外の様子を見やると、そこに広がっていたのは、果てしなく広がる海。途方もないその光景に、どれだけ落胆したことだろう。地上の様子を探るため、ノアは鳩を放つが、最初、鳩は何も持たずに戻ってくる。しかし、次に放ったとき、鳩はオリーブの葉を咥えて戻ってくるのだ。そのときの動物たちの喜び、感動たるや!
ラジオはいつも、時代の終わりと始まりを私たちに告げてきた。この物語の中に、もしもラジオがあったなら、鳩はそのMCであるに違いない。この絵の中では、動物たちは電波を通して「新たな時代の始まり」を知るのだ。その瞬間の躍動を、共に感じてみてほしい。