この橋を渡ると外宮のはじまり。実は、江戸時代の町並みはこのあたりにまで広がっていた。そんな状態で火事が起きたら大変だということで、火をよけるための溝をつくり、水を流して橋を架けた(内宮にも同じ目的で架けられた同じ名前の橋がある)。伊勢神宮の神職の人たちのあいだには「祭りに携わる人は火除橋から外に出てはいけない」というしきたりもあり、俗世間とのあいだを分かつ橋ともいえよう。
ちなみに、橋を渡ってすぐ右側に「清盛楠」と呼ばれる大木がある。およそ1000年前、伊勢神宮を訪れた平清盛がこの木の枝に頭をぶつけた。腹を立てた清盛は枝を切るように命じたという。「驕る平家は久しからず」これは日本の古いことわざだが、地位や財力に浮かれて勝手な振る舞いをすれば必ず滅びる時がくるという意味がある。
伊勢神宮に生えている木は、すべて聖なる木。あなたも木には触れないよう注意してほしい。
伊勢神宮の正式名称は「神宮」。その王道をゆく名称からして格の違いを感じさせるが、日本全国に8万社以上ある神社の本宗(ほんそう)、つまり最も尊い神社としてあがめられている。
そもそも神社の中でも、皇室ゆかりの神社のことを「○○神宮」というが、伊勢神宮でまつられているのは皇室の先祖とされる「天照大御神」。それだけに伊勢神宮の敷地の広さも他の神社とは一線を画している。その面積は内宮だけでも5500ヘクタール、伊勢市の約4分の1に達する。その多くが神域とされる森であり、ぼくたちが立ち入ることはできない。
さらに五十鈴川の下流には伊勢神宮の田んぼや畑、塩田などもある。そのような神社は伊勢神宮だけであるが、それは一体なぜなのか。想像しながら歩きはじめてみてほしい。