鳥居の向こう側は撮影禁止。このガイドを聴き終えたらスマホをしまって、お参りに集中しよう。

この先でまつられているのは「豊受大御神」。天皇の先祖である天照大御神より、庶民にとっては身近な存在だったのか。食だけでなく衣食住を司る、あらゆる産業の守り神として人々に親しまれている。

お参りの作法は「二拝二拍手一拝」。まず腰を90度に曲げておじぎを2回。次に、パンパンと2回拍手をして、手をあわせたままお祈りを。「手のひらはみんなが持っている心の鈴、いちばん美しい音色は感謝」という人もいる。お祈りが終わったら、最後にもう一度深くおじぎをして、その場をあとにしよう。

日別朝夕大御饌祭は1500年前から1日も欠かさず続けられてきた。そのことから、いかに重要な儀式であるかわかるはずだ。では、なぜそこまでして同じことを繰り返してきたのか。それは「日本という国を途絶えさせてはいけない」という想いを背負っていたからかもしれない。

日別朝夕大御饌祭で用意される食事は単なるお供えではない。「今日も昨日と同じことができています。これらはすべて神様のおかげです」という報告でもある。お供えとして捧げられる食事の内容は、米、魚、海藻、野菜、果物、塩、水、酒。最後にお酒が供えられることからも健康的な順番で、栄養バランスも申し分ない。まさに日本食の原点であり、お供えを調えていく行程は日本人の暮らしの原点といえよう。日別朝夕大御饌祭によって、1500年間、毎日、形を変えることなく受け継がれてきたのは、1500年前から変わらない「日本人のあるべき姿」なのではないだろうか。

こうしたお供えができるということは、日本人が食べることができているという証。日別朝夕大御饌祭を繰り返し続けていくことこそが、日本という国家の存続と、日本人の幸せを担保していたのかもしれない。

──つづく

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