風宮でまつられているのは風の神様。風は害虫を吹き飛ばし、雨雲を運んで田畑を育んでくれる。それだけではない。元寇の際には「神風」を吹かせて国を救ったともいわれている。

土宮でまつられているのは土地を守る神様。不思議なのは土宮が東向きであることだ。ほかの宮は南向きであるにもかかわらず、である。理由はわかっていないが、土宮は正宮よりも古くから存在していたといわれている。もしかすると、外宮が誕生する前から、この地でまつられていた土地の神様なのかもしれない。

日本人の祈りとは、日々を生きていくための祈り。地震や台風が多いこの国では、幸せが一瞬にして無に帰してしまう。そうならないように神様にはどうか鎮まっていていただきたい。そこにあるのは「畏敬」の気持ち。神を畏れ、敬う。「これだけお祭りをして捧げ物をしているのだから、どうか恵みを与えてください」というような。

伊勢神宮では「個人的な願い事をしてはいけない」という人もいるが、実際は人それぞれ。しかし、これまで生かしてくれた周りの環境に感謝すること、これから先の環境も整えてもらえるようお祈りすること。それくらいが丁度いいのかもしれない。というのも、伊勢神宮に参拝すると「気持ちがよくなる」と話す人がいる。その気持ちよさとは、「健康でありますように」「受験に受かりますように」と唱えただけでは得られない。自然や人もふくめた周りの環境に素直に感謝できたときに得られるものではないだろうか。

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