波川公園は「とある世界大会」がおこなわれている場所である。その名も「仁淀川国際“水切り”大会」。

水切り? と思った人は思い出してほしい。子どものころ、川に石を投げて跳ねた回数を競いあったことを。あなたの最高記録は何回だろうか。「10回」も跳ねれば悪くない記録であろう。しかし、ギネス記録は「88回」。それほど奥深いアクティビティでもある。
いやいやさすがに無理だって?

意外とそうでもない。さすがにギネスは無理でも、自分の過去の記録は想像以上に更新できるはずだ。それこそ、ちょっとしたコツと、最高の舞台である波川公園の石を掴むだけで。

ぼくたちは、かつての優勝者であり現在は大会の運営にも携わっているコーチに水切りのHow toを教えてもらった。

ちなみに、昔の水切り大会は波川公園より上流にある河原でおこなわれていた。しかし、参加者の記録は回を重ねるごとに伸びていき、ついには上級者の投げた石が対岸に届いてしまった。そこで、より川幅の広い波川公園に舞台を移すことになったという。

伸びしろが計り知れない水切りの魅力。もしかすると、あなたの中にも水切りの才能が眠っているかもしれない。

1|最も大切なのは石選び

写真のような「平たい石」を探してみよう。コーチが選んだ石は、思ったよりまん丸で、思ったより大きかった。人によって理想の石は異なるが、大きくて重たい石のほうが水面を跳ねるときに安定する。

2|握り方のコツは引っかかり

親指と中指で挟んで「人差し指」でホールド。その際、人差し指の第一関節で「石の引っかかり部分」をおさえる。すると投げる瞬間にリリースしやすく、回転もかかりやすい。

※写真は「中指」でホールドするパターン

3|上体はなるべく低く

サイドスローというよりアンダースロー。できるだけ水面スレスレに飛んでいくように投げる。姿勢を低く保つ練習として、まずは「片膝をついた状態」で投げてみるといいだろう。

4|スナップを効かせる

石は水面を跳ねていく途中で、風の抵抗や水の抵抗を受ける。それを最小限におさえるために必要なのが「石の回転」。投げる瞬間にスナップを効かせるのもいいが、②でしっかり人差し指をホールドしていれば自然に回転はかかる。

5|あとは練習あるのみ!

波川公園は最高の舞台。ひたすら練習を重ねよう。跳ねた回数は波紋を数えるといいが、世界大会の基準は回数だけではない。飛距離や軌跡、フォームの美しさも審査対象になっている。

練習の成果をいろんな場所で試してみよう。

たとえば、仁淀川の上流にある渓谷のような場所なら、石と石の間を通したり、狙った石に到達させたり、コントロールを競うような水切りも楽しい。

ほかにも、川幅が狭い場所なら「曲芸」の腕を磨いてもいい。野球でも同じようなことをするが、片足をあげて股の間を通すように投げる「股投げ」や、腰から体を前に倒して両足の間から後ろ向きに投げる「逆投げ」など。

同じ波川公園にしても、コーチはあえて小高い丘の上から投げて見せてくれた。高さがあるぶん、石は上から下にボチャンと叩きつけられてしまうはずが、コーチが計算して投げた石の軌道はこれまたきれいに入水して数えきれないほど跳ねていった。

さて、水切りで感慨深いのは同じ石を二度と投げることができないことである。これぞ、と思う石を拾っても投げるチャンスは一度きり。失敗は許されない。その緊張感が水切りの練習にリズムをもたらしてくれる。

それでも、波川公園は比較的「平たい石」が見つけやすいはず。なぜかといえば、波川公園には仁淀川の上流から「片岩」がたくさん流されてくるからである。

たとえば、安居渓谷には「緑色片岩」が、程野のあたりには「黒岩片岩」が多い。これらの片岩はミルフィーユのような層になっているため、川の水によって削られて、流されている間にペリペリと剥がれていく。そして手ごろなサイズとなって波川公園に辿り着く。これが水切りにぴったりな平たい石となっているのである。

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