1956年に着工。2年後に完成したが、現場はたびたび洪水に見舞われて建設途中の設備のみならず、作業員までもが濁流の中に消えていったという。

筏津ダムでせき止められた水は、パイプの中を通って下流にある「鎌井田の放水口」から放水される。その落差によって発電するのだ。しかし、このダムによってアユの生態は脅かされることになる。秋になると産卵のために川を下って海を目指していたアユの一部は、このダムが行き止まりとなり、発電のための水車に巻き込まれてしまう。日常生活においても、増水時は下流に、平常時は上流に、と頻繁に行き来していたアユは運動不足に。400g級の大きなアユが釣れることもなくなったという。

しかし、こんな話もある。アユはアユで進化する。ダムによってせき止められた水たまりを海ととらえて、そこで産卵するようになったというのである。これは釣り人に聞いた話で定かではないが、もしかすると、アユを含めた自然のほうがダムの存在に適応してきているのかもしれない。まるで、打ち捨てられた茶畑の木がぼうぼうになりながらも、自然に還っていくように。自然は人間が思っているよりはるかにたくましいのだ。

ちなみに、さらに上流には「大渡ダム」がある。1968年の着工から18年かけて完成した大渡ダムは、筏津ダムの90倍の規模を持つ。

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