「ゴリ押し」という言葉のもとはゴリという魚であることを知っているだろうか? 釣ってみるとわかるのだが、ゴリの腹には吸盤があって川底に張り付いている。ので、漁師がゴリを捕るときは網で“強引に”追い込んでいくのだとか。

しかし、そんなゴリ押しをしなくてもゴリは釣れる。コーチが教えてくれた方法はなんともシンプルで、川辺に落ちている手頃な石をふたつ拾って、片方を「碇」として、もう片方を「重し」とする。それらを2mほどのタコ糸で結んで、重しがあるほうに釣り針を結びつける。最後に釣り針にエサをつけるのだが、これも川の石をひっくり返せばカワムシがいる。それを捕まえてミミズの要領で針につける。

あとは、もうどこでもいいから重しの石ごと放り投げればよい。そして、20秒ほど待って糸をたぐり寄せると……

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さっそく釣れた!

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かわいい!ハゼみたいだ!本能なのか石の陰に隠れようとする。

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今度はなんか大きいのが釣れた!と思ったらイダまで釣れた!

簡単に書いてしまったが、本当に簡単なのだ。それはコーチが川の生き物たちの生態を知っているからでもある。

たとえば、餌となるカワムシにしたって、彼らは川の瀬になっているところで流れてくる獲物を狙っていることを知っていなくてはならない。だから、人間は瀬になっている場所の石をひっくり返してカワムシを捕まえる。

そして、ゴリは比較的に流れの弱いところで川底に吸盤で貼り付いて川の流れをやりすごしている。だから、そのあたりに石を大好物のカワムシを放り投げてやれば食らいつく。そのあたりのことを知っているから、こんなに簡単な道具でも釣れてしまうのだ。つまり、釣りは魚との知恵比べ。魚の思考をトレースしなければならないのだ。

釣れたゴリは唐揚げにして食べるのが主流だが、昔の文献によれば、ゴリに生姜を入れた佃煮は仁淀川の名物であったという。また、鍋を用意して河原にいき、獲ったゴリをその場で卵とじにしたゴリ汁もまた忘れられないとのこと。なんとも美味そうな話である。

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