にこ淵には、とある伝説が残されている。
その昔、高知城下に大金持ちの商家がいた。その娘はあるとき皮膚の病気に罹り、龍の鱗みたいな肌になってしまった。それを見た父親は非情にも「お金をやるから人目につかないところに行きなさい」と命じる。家を追い出されてしまった娘は、山の中をさまよい歩き、にこ淵のそばの民家に辿り着く。そして、その家の百姓にお願いをする。
「一晩だけ泊めていただけませんか? あっちの小屋で構いません。でも、決して覗かないでほしいのです」
しかし、百姓はついつい覗いてしまう。すると、娘の姿は見えず、小屋にある「こし器(和紙づくりの道具)」の中で、大蛇がトグロを巻いていた。
「見てしまいましたね。そっとしておいてくれたらお金を差し上げたのに──」
そう言って娘はにこ淵に身を投げてしまったという。
このような伝説があることから、昔は地元の人もあまり近づかないようにしていたという「にこ淵」。訪れる際は、節度を持って訪れたい。