この場所に来ると「誰かを待っている人」を見かけるはずだ。
待ち合わせにちょうどいいこの場所には時計塔があった。が、最近の台風で吹き飛ばされてしまった。というわけで、時計を見ることはできないのだが「市民憲章」の看板がある。
私たちは まちを美しくしましょう
私たちは 公共物を大切にしましょう
私たちは 時間を守りましょう
……ん? 時間? と思ったあなたはウチナータイムを知らない。沖縄の人は本土の人間とは異なる時計で生きている。
たとえば、居酒屋に「18時集合」と言われたとする。しかし、18時に席に着いているのは本土の人だけ。沖縄の人はたいてい遅れてやってくる。5分や10分ではない。30分、60分の遅れも当たり前。理由を聞けば、「バスが来なかった」「時計を見るのを忘れてた」「結婚式があった(ウソ)」と悪びれない。というか、理由を問い詰めるのも本土の人だけ。沖縄の人たちは誰も気にしないのだ。それが「沖縄時間=ウチナータイム」である。
とはいえ、ゆいレールができてから意識が変わってきたという。もしかすると、沖縄の人が遅れを気にしないのは、鉄道のない車社会が長く続いたからかもしれない。待ち合わせと言っても、みんなが車で来るのであれば渋滞もあって時間が定まらない。台風も多いとすればなおさらだ。
逆にいえば、本土の人たちが時間に正確なのは鉄道網が異常に発達したから。世界基準で見れば本土の人の感覚こそ、異常かもしれないのだから。
……と、音声にしていないこの「裏文書」に気づいてくれたあなたに。
ひとつ前の写真は首里城の漏刻門にある「日影台」。琉球王国で最も偉大な政治家とされる「蔡温」は、首里城にこの時計を新たに設置した。そして、時間のゆるみは国家のゆるみであると時間の大切さを説いた。現代に続くウチナータイムを知ると、蔡温の教えがうまく伝わったのかはアヤしいところだが、それはさておき……ぼくたちの首里城のガイドには、通常のガイドより一歩踏み込んだ「裏文書」が盛りだくさん。ぜひ「首里城」のガイドも試してみてほしい。