隠岐の民謡を代表する「どっさり節」。その発祥は知夫里といわれている。

江戸時代、知夫里は北前船の寄港地として賑わっていた。あるとき、知夫里の漁師の娘であった「お松」は、新潟の若い船乗りと恋に落ちた。しかし、北前船が停泊していられるのは風待ちをするわずかな期間だけ。ふたりはやがて別れなければならない運命だった。

その後も、お松は去っていった船乗りのことを忘れることができず、寂しさを紛らすためか、船乗りに聞かされていた歌を口ずさむようになった。ふと、その歌声を耳にした島の人が「あの船乗りが歌っていた節回しとは少し違うな」と指摘すると、お松は「どっさりくっさり似ています」と言って寂しそうに笑ったそうな。

「どっさりくっさり」とは、どのような意味なのだろうか。

実は、どっさりくっさりとは、隠岐の方言で「どうにかこうにか」という意味。「やりきれない気持ちもあるけど、どうにかこうにか生きています。」そんな想いが込められていたのかもしれない。

 朝に夕べに便りを待てど
 磯の松風音ばかり サアノウェー
 狂う コレワイドウジャナー
 この身を ナアチョイト
 何としょ サアノウェー

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