またここで問いかけです。庭と絵画の違いは何でしょうか?
その答えは、変化するか否か。庭の草木は育ち、刻一刻と変化する「現実」。絵画はその一瞬を切り取り、永遠の時間の中に残そうとする「空想」です。
さて、この庭を手がけたのは作庭家ではなく、なんと画家の狩野元信。彼は室町時代に画聖と呼ばれた人物。一年中変わらない「不変の美」を求め、庭に常緑樹を植え、空想を現実にしようとしました。
庭を手掛けるにあたり、元信は絵画を描き、それを庭として立体的に表現したと伝わっています。この時、元信は70歳近く。美術とは自然の模倣から始まるもの。画家として円熟期に差し掛かっていた元信が、自然の模倣から離れ、その再現を行おうとしていたことは大変興味深いできごとです。
ちなみに、伝統的な禅寺の庭は基本的にはお花を植えません。ここでも考えてみましょうか。なぜでしょう?
それは、「常緑の美」を大切にしているから。昔は変わらないことが大きなステータスでした。花が咲くとどうしてもそこに目がいきます。いまでこそ華やかに咲いて儚く散っていく桜や紅葉が珍重されていますが、楽しめるのはせいぜい2週間。対する常緑の庭は四季を通して美しい。どんな時でも「きれいだ」と思えることを昔の人は重視したんですね。