このお庭には、じつは退蔵院ならではの瓢鮎図への工夫があります。
説明を聞きながら、それが何か考えてみてください。

さて、このお庭は1965年に完成したものですが、それまではこの一帯は孟宗竹の竹やぶでした。孟宗竹は60年~100年で花が咲き枯れてしまいます。退蔵院でも一斉に花が咲いて、枯れてしまったんです。そこで私の祖父である当時の住職が竹を全部刈って庭園にしました。

島根県の足立美術館やボストン美術館の日本庭園などを手掛けられ、「昭和の小堀遠州」と言われた中根金作氏に作庭をお願いし、少しでも大きく見せたいという思いがあり、お庭のデザインも工夫していただきました。全体をなだらかな勾配にして、手前が低く奥をだんだんと高くしています。

まわりを木で囲み、手前の木は低く、奥は大きく丸く刈る。この工夫で、実際よりも奥行きがあるように見せています。みなさんは池に来るまでに余香苑を上から見られたと思うんですが、ここから見る姿と随分と違いませんか。これもまた物事の多面性を表現していると言ってもいいかもしれません。

また、余香苑には椿やしだれ桜、アジサイやキキョウ、梅など四季おりおりの花が植えられています。これは禅寺の庭としては異例。その理由は元信の庭でお話した通り、普段は伝統的な庭は花を植えません。元信の庭とは対照的な、季節ごとに姿を変える演出。これはこれで世の無常を表すようで趣があります。

さて先ほどの瓢鮎図に対する私たちなりの工夫。何か分かりましたか。
それは池の形にあります。全体が瓢箪の形になっています。そしてここに小さいナマズが2匹住んでいるんです。ただし夜行性なので、昼間はなかなか出てきません。これが私たちならではの瓢鮎図への答え。このアプローチをした回答者は、未だいらっしゃらないんじゃないですかね。

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