ここではお抹茶をいただけます。お抹茶は、臨済宗とすごく縁深い飲みものです。と言いますのは、臨済宗の開祖・栄西禅師や聖一国師が日本に喫茶の習慣を広めたから。
その昔お茶は嗜好品ではなくお薬でした。ビタミンが多く含まれていますし、カフェインを含んでいるのも頭もシャキッとさせる理由です。座禅をしていると眠くなることもあります。そんな時の目覚ましにも向いているんです。
当時、禅宗は武士から支持されていましたが、お抹茶と禅宗は切っても切り離せない関係。ということで、お茶を嗜む大名も多かったそうです。千利休を召し抱えた豊臣秀吉なんかが著名な例ですよね。
ちなみに、退蔵院には「囲の席」と呼ばれるかくれ茶室がございます。お茶の精神を否定したわけではないんが、修行専一を掲げた妙心寺において、「習い事でもある茶の湯は修行の妨げになる」、そのように考えられ、茶道が禁じられた時代に建てられたものです。
ところがひそかにお茶を求める僧侶が多かったのでしょう。第6世の千山和尚が外側から茶室だと分からないよう巧みに隠れ茶室を作ってしまいました。当時のお茶はそこまで人の心を惹きつけるものだったんですね。
たとえ同じものでも、その時代によって捉えられ方は違います。いまのあなたにとって、お抹茶とはどういう存在ですか? いかに言葉を尽くしても、その味は体験するほうが分かりやすい。ぜひ、実際に飲んで、体験してみてください。
ちなみに、お茶菓子は、京都の老舗和菓子店「老松」と共同開発した退蔵院オリジナルのお菓子です。半生菓子の中に季節のドライフルーツを入れ、甘味とほんのり酸味を味わっていただけます。瓢鮎図にちなんで、瓢箪と鯰を表面にあしらいました。
中に何が入っているのか、外からはわからないので、まるで禅問答のような仕掛けもしてあります。さて、これ何ぞ。そこもぜひ楽しんで召し上がってください。