職人はひたすら手を動かし、コツコツと地味な作業を積み重ねる。その工程に派手さはないが、完成した製品は唯一無二のもの。
5階の表示は、異なる表面加工を施した金属プレートを組み合わせ、「5」のシルエットを形作った。
加工法は5種類で、いずれも素材は同じものを使っている。それぞれに独特の風合いが見られ、同じ素材だったとは思えないだろう。
・鏡のように磨かれた「バフ」
・横一線にけずり目が入る「ヘアライン」
・金属に粒子を吹き付ける「ブラスト(ガラス粒を使用、表面に光沢があるもの)」
・同じく「ブラスト(アルミ粒を使用、表面がマットなもの)」
・鎚で叩いたような「ハンマートン塗装」
これらの工程の多くは、アルミの削り出しや表面加工を専門にする浩伸技研が手がけた。
注目したいのは鏡のようなバフ加工。これは回転する研磨剤を使い、ひとつひとつ職人の手作業で磨かれている。最初は目の荒い研磨剤からはじめ、だんだんと目を細かくしていき、最後はレーザーの測定器で仕上がりを確かめる。
完成品には数ミクロンの傷も許されない、まさしく気の遠くなる作業だ。
こうして加工されたパーツは、集積回路の製造機械や医療機器をはじめ、国内外のモーターショーに展示されるモデルカーにも使われている。海外のモーターショーでは、バフ加工の美しさに多くの人が目を奪われたという。
今日も職人は機材に向かい、黙々と手を動かす。クライアントから要求される高いハードルを乗り越えるために。
次は「4」階のオブジェへ。複雑に折り曲げられた「鉄の折り紙」を紹介する。