蒲田ガイド
蒲田に泊まる。
あなたが宿泊している大田区は、都内でも随一の工業地帯。3,000以上の町工場があり、ひとつひとつの規模は小さくとも、高い技術力で日本の工業をリードし続けている。
この地域をよく表している言葉がある。それは「機械のポンチ絵(図面)を描いて、紙飛行機にして飛ばせば、翌日には製品ができ上がってくる」というもの。大田区の町工場は技術特化型。金属研磨ならここ、樹脂けずりならここ、と得意分野がはっきりしている。おのずと複数の工場が製品を分担してつくることが多くなった。
大田区は街全体がひとつの工場のようなもので、対応もスピーディ。「ポンチ絵を描いて……」という言葉は、「大田区の町工場に頼めばきっとなんとかしてくれる」という期待と信頼を表すものなのだ。
そうして生み出された部品は世界に飛び立ち、宇宙開発の現場や海外の研究施設でも使われているという。現に、世界中を探しても大田区の工場しか加工できないパーツは多い。「世界最先端の技術を大田区の工場が支えている」と言っても過言ではないだろう。
このホテルには、各階数の表示をはじめ、いたるところに大田区の町工場が製作した製品が展示されている。いずれも複数の工場が協力し、技術を駆使して出来上がった逸品ばかり。これらの製品ができあがった背景をさぐっていくと、工場それぞれに職人が紡ぐ物語があった。
ここからは、日本のものづくりをリードするクラフトマンシップの世界をご案内しよう。まずはエントランスの風除室へ。職人の相棒、電動工具の紹介からガイドを始めよう。