改正湯もおれがよく行く銭湯だ。ここには黒湯・シルク湯・ジャグジー湯・黒湯の炭酸湯・水風呂が用意されている。これだけのお湯に460円で浸かれるんだからお得だろう? 特に黒湯の炭酸湯は珍しいから、来てみるといいよ。

奥に見える水槽はなんですかって? これは昔の建物に池があって、そこにいた魚達なんだよ。今じゃ代替わりして何世代目だろうね。

代替わりといえば、銭湯も後継者不足で廃業するところが多いらしい。町工場も同じ課題に悩まされているから、他人事とは思えねぇんだ。

でもね、改正湯は活きのいい、若い番頭さんが切り盛りしているのさ。男の子の方は毎川くん、こいつは全国1000箇所以上の入浴施設に通ったらしい。肩書きは「風呂デューサー」っていうそうでテレビにもよく出ているよ。

女の子は中野さん。蒲田にある工学院大学でデザイン学科を卒業してここに就職したそうだ。彼女は黒湯を煮詰めて顔料にして絵を描いてるって言ってたな。番台の冷蔵庫に「黒湯ビール」が置いてあるだろう? そのパッケージもデザインしたんだと。おれにゃできないことだね。

そういえば、「黒湯の発祥は工業用水にある」ってご主人が言ってたな。
戦後、町工場の用水が必要で、掘ってみたら黒い水が出てきた。その水を沸かしてみたら温泉みたいに効能があるんじゃないか、ってことで始まったらしい。だから歴史はそんなに古くないそうだ。たぶんおれの親父の代の話だから詳しくは分からないけれど、黒湯の由来が町工場にあったとは面白いよなぁ。

ご主人は「蒲田を温泉地だと考えてもらえたら嬉しい」とも言っていた。黒湯はひとつひとつ泉質が違う。草津や湯布院でも湯巡りをするだろう? そんな風に巡ってもらえたら嬉しい、ってな。なんでも、黒湯は濃ければいいってもんじゃないらしい。薄くても良い効能のところもあるそうだよ。蒲田の銭湯にはそれぞれ個性があるから、色々巡ってみればいいさ。

ご主人に言わせりゃ「銭湯が生きている街は活気がある」そうだよ。蒲田には個性をもった面白い店も多いから、銭湯巡りのついでにお邪魔してみるといいんじゃないか。そうやってこの街のファンになってくれたらおれも嬉しいね。

営業時間:15:00〜24:30
定休日:金曜日
電話:03-3731-7078
住所:東京都大田区西蒲田5丁目10-5 改正ビル 1F

Next Contents

Select language