町工場のドアを開けてみると内部は秘密基地のよう。
ワンルームの部屋がすっぽり入りそうな大きな機械が「ギィーン、キュウーン」と高い音を立て、デジタルメーターが刻一刻と数字を変えていく。
「ここでなにができるんだろう?」。そんなワクワクが止まらない。
2階の表示を手がけたのは、5階表示と同じ浩伸技研。規模は取材した町工場のなかでも特に大きく、奥行きは40mあるだろうか。3階建ての社屋のうち1階でオブジェが制作された。
音を発していた機械はマシニングセンターと呼ばれ、コンピューター制御で緻密な加工が可能。
縦・横・深さを設定した3Dデータを入力すると、その数値に合わせて自動的に加工を行ってくれる。大きいものは中に大人が立ったまま入れるほど大きく、価格は数千万円を超えるそうだ。
加工が終わり、マシニングセンターの扉が開く瞬間は壮観だ。
SFならば、ロボットのコクピットが開く瞬間に例えられるだろうか。重厚な音とともに扉が開き、加工された製品が登場する。
お見せできないのが残念だが、メカ好きにはたまらない瞬間だろう。
2階表示は大小様々な穴をアルミ板に空け、遠くから見ると「2」の文字になるように加工している。同じ大きさのドリルを使い、切削の深さを調節することで穴の大きさを変化させた。
浩伸技研が担当したのは穴あけ加工で、表面に施した皮膜と塗装はほかの町工場に依頼している。これもまた、大田区の町工場が得意とする分業制工業だ。
点と点が面になるように、様々な工場が協力し合い、ひとつの共同体になっている大田区のものづくり。このオブジェはそのあり方を象徴しているようだ。最後に「1」のオブジェを見てみよう。