昔からやっている店はずいぶん減ってきたが、それでもまだ蒲田には、昭和の雰囲気を残している店があるよ。古き良き大衆酒場の空気に浸りたいなら、「鳥万」がオススメだ。
この5階建てのビルが、そのまんまひとつの酒場なんだ。圧倒されるだろう? 蒲田のランドマークだなんて言われてるよ。
客席は1階から4階まで続く。1階、2階はカウンターとテーブル席だ。独りでやってきてサクッとひっかけて帰る、地元の常連客が多いかな。3階と4階は大宴会もできるお座敷席だ。
この広い客席を回す、おばちゃんたちのオペレーションが小気味いいったらない。おっと、おばちゃんなんつったら怒られちまうな、「ねえさん」たちだ。阿吽の呼吸で客をさばいていく。
混んでる時間には、なかなか1階席には座れない。2階も空いてなかったら3階、3階も満席なら4階……。ぜえぜえ言いながら階段上ってると、「ほら、あとちょっとだよ!」なんて威勢のいい声が背中に飛んでくるよ。
ビールやホッピーも捨てがたいが、大衆酒場で飲むなら、やっぱりバイスサワーだな。この瓶のレトロな感じが、またいいだろう?
バイスってのは「梅酢」のことだなんて言われたりもするが、ほんとのことを言えば、梅は入っていない。真っ赤な色と風味はシソの葉、スッキリした酸味はリンゴの果汁がもとになっているらしい。
え? じゃあ「バイス」の本当の意味はなんなんだって?
昔さ、「ホイス」っていう焼酎の割り材がちょっと流行ってたんだよ。なんでも「ウイスキー」を短くもじったのが「ホイス」なんだそうだ。そして、それをさらにもじって作られたのが「バイス」っていう噂だぜ。
まあ、昔はビールやらウイスキーやらの高い酒は、庶民には手が出せなかったんだ。だから、焼酎をビール風味やウイスキー風味で飲めるように、いろんな割り材が開発されったてワケさ。
スッキリしたバイスサワーは揚げ物との相性が最高だ。鶏の半身を豪快に揚げた、若鶏の唐揚(420円)なんてどうだい?
一本90円から気軽に頼める焼き鳥も人気メニューだ。大衆酒場だけあって、のんべえの好きな肴だったらなんでもそろってる。しかも、どれも300円前後だ。その日のサービス品なんていう特別メニューもあるよ。たとえば、普段は350円のワラサの刺身が200円になったり、とかね。
こういう店に慣れてないと、暖簾をくぐるのにちょっと勇気がいるかもしれねえな。でも、最近じゃ若いお客も多いし、一度入ればくつろげること間違いなしさ。あれこれ頼んでも財布にやさしい。有難いじゃないか。
営業時間:[月~土]16:00~23:00、[日・祝]15:00~22:00、無休(正月休み有り)
電話:03-3735-8915
住所:東京都大田区西蒲田7-3-1
バイスサワー セット320円
若鶏の唐揚 420円
まぐろぶつ 380円
やきとり 一本90円~