この襖は伝・狩野永岳とされています。本堂を正面にして左側の部屋にあるのが花鳥図で、右側が中国文人の間。まずは中国文人の間から紹介します。
この襖には4つの趣味が表現されています。囲碁と琴、詩書、そして画です。なぜこれらが描かれているのか。実は儒学を極めるには極めた人がやっていたことと同じことをしなさいという教えがあります。勉強することで95%は学べるかもしれません。でももっとも大切な5%は生き方そのものを知らないといけないのです。詩を読むことで感じる、夏から秋の変わり目。画を描くことで初めてわかる空の色の違い。師匠が教えることだけではなく、自分自身が学びたいその人のキャラクターになりすまし同様の行動することで到達できるところがあるのです。この襖絵は、そういったことを伝えているので4つの趣味が描かれています。
私たちは効率的に学ぼうとすることで、大切なものまで削っているのかもしれません。たとえば瞑想という言葉がマインドフルネスになり、さらに単純化してメンタルトレーニングとなってしまったとします。それでは本来あったはずの哲学が抜け落ちてしまい、もっとも大切なものが効率化の元に消えてしまうのです。産湯と赤ちゃんを一緒に捨てないでと言われますが、通常私たちは何がもっとも大切かわからないことが多いもの。だから、師匠がやっていることと同じことをやることでその道に到達することは、非効率に思うかもしれませんが案外近道なのです。この襖絵はそのことを伝えています。