Kyu Asakura House

目立たないところにあるためか、日本人さえこの場所の存在を知らない人は多いと思う。代官山という都心にありながら、日本の伝統的な家屋を楽しめる場所にもかかわらず、観覧料が缶ジュースと同じ値段の100円。

ここでは、襖や畳、床の間など、日本の伝統的な家屋を一堂に体験できる。実際、日本人でもマンションの中で畳と触れ合う機会は少なくなっている。ぼくには分からないが、多くの日本人がこの畳の匂いが「田舎」を思い出させるという。

この家の持ち主である、朝倉家はもともと武田家に仕えていた武士。江戸末期には自身で水車を所有して、その収益で渋谷周辺の土地を買ったそうだ。その後、明治初期から朝倉金蔵が米穀店を営み成功。その孫の朝倉虎治郎は、東京府議会議長や渋谷区議会議長などを歴任。彼の自宅として使われたのが、この旧朝倉邸だ。

目の前の大通りである、旧山手通りも彼らの私道だったとか。それも当時からその道路の幅は変わっていないというから、そうとう広い私道だったことが伺える。

しかし、第二次世界大戦以降は、所有していた土地の大部分を失った。さらにこの朝倉邸も手放さなければいけなくなり、売却された。しかし、残された土地を活かしてビジネスをしようと考えた。商業施設、住宅施設が融合する新しい建物、現在のヒルサイドテラスをつくった。ちょうど朝倉邸の横にある、コンクリートのビル群のことだ。

その中にギャラリーを併せ持ち、そこでは頻繁に展示会が行われていた。アーティストも集まるようになった。いまの代官山がデザインに洗練され、オシャレな街になったきっかけと言っても過言ではない。売却された朝倉邸は、現在渋谷区によって管理されている。

街が、いまのような形になるにはいくつものストーリーがある。代官山と朝倉家のストーリーは切っても切り離せない。

過去に思いを馳せながら2階に登り、そこからの景色を楽しむ。100年前に暮らしていた人たちも同じ風景をみていたのだろうか。歴史ある建物だからこそ、すこし、想像をふくらませたくなる。

店名:旧朝倉家住宅
住所:東京都渋谷区猿楽町29−20
連絡先:03-3476-1021
営業中: 10:00am~18:00pm

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