終わりに

フィルムカメラ、カセットテープ、レコード、サードウェーブコーヒー、ミニマリズム、銭湯、ドラフトビール。


これは、このガイドで紹介した一種の運動だ。それらの運動に根付く、Satisfaction in the process。脱デジタル化、行き過ぎたグローバル化への反抗とも言えるし、あるいは大量生産・消費に対するアンチテーゼであり、一つ一つのものを丁寧に少量で楽しんでいくというカルチャーでもある。

アメリカではもともと商業化される以前は、少量生産、少量消費だった。隣人がつくった、作り手の見えるものを使い続けていた。それが商業化され、一気に消費社会へと変化していった。大量生産、大量消費。それがリーマンショックを機に、いままで価値だと信じていたことが突然失われるという体験をした。ポートランドをはじめ、ヒップスターと言われる人たちのコミュニティーが出来ていった。チェーン店よりもこだわりを持つ個人経営店。自動車よりも自転車。遠く離れて作られた作物よりも、隣人が作ったストーリーのある野菜。いま起きているのは、かつての文化を取り戻そうとしているだけなのかもしれない。

そしてこの流れはさらに広がっていくと思う。国を超えて、動いている。いまは小さな動きだが、大きな渦になっていくだろう。あなたの街にも、またはまわりにSatisfaction through the processはあるだろうか。

ON THE TRIP 編集部
成瀬勇輝 Cory Baird

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成瀬勇輝 Cory Baird

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成瀬 勇輝 Cory Baird

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