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蒲公英(巻四)
 
托根群卉裡。迎暖漸抽芽。
驚看東皇手。黄金剪作花。
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訳:冬がすぎて、暖かくなって、眠っていた根っこからようやく芽が出てきた。春の神様は驚いたことをするものだ。黄金を切りとって花をつくる。



中津万象園はいまから300年前、この地を治めていた丸亀京極家がつくった大名庭園だ。代々の領主によって少しずつ手が加えられ、明治に入ってからは、地元や近隣の民間企業が買い繋いで守ってきた。「森羅万象の精神を表現するこの庭を残したい」という想いが、バトンを繋いできたという。

森羅万象とは、宇宙に起こるすべての出来事。「森羅」とは樹木が限りなく茂り並ぶこと。「万象」とはあらゆる現象のことを指す。

両腕を広げた天翔ける朱色の太鼓橋を上れば、広大な空が拓ける。 海を想起させる池には島々が点在し、その向こうには、人の暮らしを思わせる茶室が佇んでいる。池の水面は雲の流れを写し、月光に揺らめく。季節は巡り、景色は絶えず移ろいゆく。

そんなまさに森羅万象を感じさせる光景の中に、私たちはこれから足を踏み入れていく。

冒頭に紹介したのは、かつてこの庭の主(あるじ)だった藩主、京極高朗の詠んだ詩。
そこには彼がこの庭で個人的に見つけた森羅万象が映し出されている。

あなたはこの小宇宙に何を見つけるのか。
庭園を巡りながらあなた自身の発見を楽しんでほしい。
 

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