私たちは時として、目に見える情報に頼りすぎているかもしれない。
「See by Your Ears」
これはサウンドアーティスト evalaによる「耳で視ること」の提案。
 
目の前にあるのは、丸亀市にある「中津万象園」で生まれた音の風景だ。この日本庭園の中心には大きな池があり飛び石の橋が渡されている。この作品では庭園内の3ヶ所に設置されたマイクからレコーディングされた音をもとに、evala独自のアルゴリズムで可視化している。


 
池の魚が跳ねた音、空を過ぎる鳥の羽ばたき、公園を訪れる人たちの話し声や足音……。庭では常に様々な音が生まれ、響き、交わっている。
その様子を捉えた「音の絵画」はまるで生き物のように変容する。
ある時間のそれは繭を想起させ、またある時間は鳥のような姿を見せる。
 
絵に近づいてみてほしい。パネルから音が出ていることに気がつくだろう。このサウンドインスタレーションに使われている音も全て「中津万象園」でレコーディングされたものだ。ある部分だけを切り取られ、再構成された庭の音。それらは私たちに「聴くこと」から、「想像すること」を促す。
 
フランスの思想家、ジャック・アタリが言うに「西洋の知はここ25世紀というもの、世界を見ることに汲々としてきた。それは世界が見取られるものではなく、聞こえてくるものだということを理解しなかった。世界は読み取られるものではなく、聴き取られるものなのだ。(中略)生とは生々しいもの。労働の雑音(ノイズ)、人間の雑音、自然の雑音。雑音の聞こえぬところに何も起こりはしない」
 
私たちは本来、目に映るよりも圧倒的に多くの情報を受け取っている。
そして、それはなにも聴くという行為に限ったことではない。
体内の水は音の波と共振し、肌は空気の揺れに絶えず触れ続けている。
 
世界を五感で感じ取り、自分のなかに取り入れたとき、何が起きるだろうか。
これからこの音の源泉、瀬戸内が誇る日本庭園「中津万象園」へとお連れしたい。

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